Category

記事一覧

  • 次世代のサステナブルな食糧生産法の紹介【精密醗酵(せいみつはっこう)】

    昨今、”精密醗酵(precision fermentation)” と呼ばれる技術の研究が産業レベルまで成熟してきています。 この技術を活用すると、哺乳類に頼らずに微生物の力だけでお肉や牛乳などの食用タンパク質が作れるようになるのです。 世界の食料問題解決のカギとも言われるこの技術についてご紹介いたします。 醗酵のイメージ(MrdidgによるPixabayからの画像) 〇哺乳類由来肉が抱える環境負荷の問題 近年、牛肉や豚肉などの哺乳類由来のタンパク質が与える環境への影響が注目されています。 牛肉や豚肉は当然それぞれ牛や豚からとれるわけですが、これらを育てるためには非常に多くの資源を必要とします。 例えば牛肉は1kg生産するために、飼料として消費されるトウモロコシは11kgに上ると言われています。 知ってる?⽇本の⾷料事情〜⽇本の⾷料⾃給率・⾷料⾃給⼒と⾷料安全保障〜 p.4より(農林水産省) すなわち、牛肉は実際に食べられる量の10倍以上量の別の食べ物を消費しなければ作れないのです。 飼料用のトウモロコシを育てるためにも多量の水・栄養源が消費されていることを考えると、牛肉等の哺乳類由来のタンパク質は、資源消費量の多い高環境負荷な食品ということができます。 世界人口は増加の一途をたどっており、このままでは大規模な飢饉発生すると言われている中で、哺乳類性のタンパク質の生産は大きな負荷になっています。 World Population 1820 2019 – SciFi (sciencefiles.org) この問題の解決のために、哺乳類由来に代わる様々なタンパク質食料の提案がなされています。 例えば植物や培養細胞を使った代替肉や、より環境負荷の低い昆虫食などがこれにあたり、すでに様々な企業が商品化に着手しています。 〇精密醗酵の特徴と代替肉との違い 精密醗酵もこれらに並ぶ、哺乳類に頼らないタンパク質生産法の一つです。 精密醗酵では、カゼインやオボアルブミンなどといった哺乳類由来のタンパク質を、微生物によって作らせる方法です。 これまでの代替肉と違うのは、これらが哺乳類由来とは異なる種類のタンパク質をお肉のように似せているだけなのに対して、哺乳類由来と全く同じ種類のタンパク質を作れているという点です。 一口にタンパク質といってもアミノ酸配列によって機能も風味も異なるため、精密醗酵で作られたお肉には風味や栄養素の面でも、既存の哺乳類由来のお肉と全く同じものが作成されできることが期待されます。 精密醗酵は微生物の遺伝子組み換え技術が前提となっており、本来哺乳類で作られるたんぱく質の遺伝情報を微生物に導入することで、同じタンパク質を微生物に作らせています。 Arek SochaによるPixabayからの画像 実は、類似の技術自体は古くからあるものです。 特定のタンパク質を大腸菌等に作らせる(=リコンビナント発現)は微生物学分野では汎用的な技術です。 産業分野でも、動物から作ると効率の悪いインスリン(糖尿病患者に投与する医薬品)やレンネット(チーズの凝固に使われるプロテアーゼ)の生産に使われています。 代替肉分野で革新的なのは、牛乳やお肉などといった、大量かつ複雑なものも再現するほどの精度で生産が可能になったことです。 例えばイスラエルにあるスタートアップ企業のImagindairy社は、精密醗酵によって牛乳が持つ何十種類ものタンパク質を正確に再現することで、本物と見分けのつかない完全な牛乳を作ることを目指しています (Imagindairy ) 〇ユーグレナ社の取り組み 当社でも以前より様々な低環境負荷食材の開発に着手しており、精密醗酵についても研究を開始しています。 藻類には、光合成によって二酸化炭素からタンパク質を合成できるという特性があります。 この特性を活用すれば、将来的には二酸化炭素からお肉を合成する、なんてことも可能かもしれません。 食についても将来への不安の少ない持続的な未来を作るため、今後とも研究開発を進めていきます。

  • ユーグレナ味の牡蠣!? ~~~販売開始~~~

    冬になると食べたくなる、牡蠣。実は牡蠣はサステナブルな可能性に溢れた食品だと言うことはご存じでしょうか? 牡蠣殻の主成分は炭酸カルシウム (CaCO3) ですが、牡蠣は成長の過程で海水に溶け込んだCO2を間接的に取り込んで牡蠣殻を合成するため、炭素の固定に寄与することが期待されています。さらに牡蠣養殖は、投餌の必要がないため環境負荷が少ない点、異常発生したプランクトンを摂餌により除去して海洋環境における物質循環の調整役を担う点からも、牡蠣はサステナブルな食材として注目されており、WWFのレポートでも言及されています(https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210308resource01.pdf)。 冬になると食べたくなる「牡蠣」 一方、弊社が有する独自素材、微細藻類「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」もサステナビリティへの寄与が期待される食材です。59種類の豊富な栄養素を含み健康食品として利用されるだけでなく、成長時に光合成をしてCO2を吸収するため、人と地球の健康を同時に実現するポテンシャルを持つ素材として注目されています。微細藻類ユーグレナについての紹介記事は⇒こちら 微細藻類「ユーグレナ」 この度、株式会社ユーグレナとうみの株式会社は、これらのサステナブルな素材、ユーグレナと牡蠣を組み合わせて、「フレーバーオイスター ユーグレナ」を共同開発いたしました。 「フレーバーオイスター」はうみの株式会社らが特許出願しました独自技術により作られます。この技術は、飼育水中に懸濁した非水溶性の微粉末を投餌すると牡蠣類が餌と誤認して摂食してしまう点と、牡蠣を海水から水揚げしてしまうと腸管内容物は排出されず保持される、という2つの性質を利用したものであり、任意の素材を取り込ませ、風味づけを行うことができる優れた技術です。 ひと口目は通常の牡蠣、しかし噛み進めると給餌素材の味わいが口に広がっていき、複雑で奥ゆかしい豊かなおいしさが感じられます。 この技術を用いて共同開発しました「フレーバーオイスター ユーグレナ」。断面からは緑色のユーグレナが垣間見られます。ひと口目は通常の牡蠣ですが、二口目から徐々にユーグレナの風味が広がってきます。牡蠣がユーグレナを少し消化したおかげで、ユーグレナ粉末をそのままかけて食べるよりも、ユーグレナの特徴的な藻の香りが抑えられ食べやすくなったのは興味深い点です。ユーグレナのフレーバーが感じられる美味しい牡蠣であることもさながら、ユーグレナが持つ豊富な栄養素も含まれ、さらには海や地球のサステナビリティに貢献できる可能性を有する商品となりました。 「フレーバーオイスター ユーグレナ」の断面図 社内のメンバー(28名)ではありますが、「フレーバーオイスター ユーグレナ」試食会が行われました。その結果、通常の育て方をした基準の牡蠣に比べて、好意的な食味結果が得られました。個人の感想ではありますが、「クリーミー感があった」「身が厚くうま味があった」等の声が聞かれ、ユーグレナフレーバーの牡蠣で一定の評価をいただくことができました。 [参考] 社内メンバー (28名) での試食会のアンケート結果 比較対象 (通常の牡蠣) での各項目を3とした際の相対値 以上のような「フレーバーオイスター ユーグレナ」、この記事をお読みいただいてお味が気になる方はいらっしゃるのではないでしょうか?そんな方々は、⇒こちら をチェックです。「フレーバーオイスター ユーグレナ」をお求めの方は通販サイトからご購入いただけます。 牡蠣小屋うみの https://kakigoyaumino.com/ (内容) ・プレーン8個 ・フレーバーオイスター ユーグレナ8個 (価格) 5,500円(税、送料別) 食べて美味しく、人も地球も健康に。この機会にご賞味いただき、ぜひ食卓で味わいながらサステナビリティについて考えていただくきっかけになればと考えています。 弊社はこれまで、バイオマスの5F※の基本戦略に基づき、ユーグレナなどの微細藻類を活用して、食品や化粧品をはじめとするヘルスケア事業やバイオ燃料開発・製造などのエネルギー・環境事業に取り組んできました。今回開発した「フレーバーオイスター ユーグレナ」は、5Fの中ではFeed(飼料)利用に相当し、ユーグレナのさらなる活用を進めるものです。ユーグレナ社は今後も、ユーグレナなどの微細藻類を活用した事業を推進します。 ※ バイオマスには、重量単価が高い順にFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の5つの用途があり、重量単価の高いものから低いものに順次事業を展開していくことで、バイオマスの生産コスト低減とバイオマスの利用可能性の拡大を推進する、という事業戦略

  • 宇宙飛行がマウスの肝臓に与える影響の一因を特定しました!

    2021年9月、アメリカのスペースX社がついに民間宇宙飛行を達成しました。 驚くべきことに、今回の宇宙飛行を達成した宇宙船『クルードラゴン』は、わずか半年ほどの訓練を経ただけの民間人4名のみをクルーとし、3日間の宇宙飛行ののち地球に帰還しました。 クルードラゴンがISSにドッキングする様子(©NASA) もはや宇宙飛行は我々民間人にとっても夢物語ではなく、生きているうちに人類が宇宙に移住する未来も見えてきているのです。 一方で、そうはいってもまだまだ本格的な宇宙移住に向けて解決するべき課題も山済みです。 特にわかっていないのが宇宙空間が生物に与える影響です。 宇宙空間は、あらゆる意味で地球上とは異なる環境です。大気が違うのはもちろんのこと、無重力環境や高線量な宇宙放射線の照射、数百℃に及ぶ寒暖差など、生物にとって過酷な要素がいくつもあります。 これらによって、宇宙飛行を行った生物はしばしば原因不明な体調不良を訴えることが知られています。 もっともよく試験されるマウスでは、特に肝機能に肝臓の線維化や非アルコール性脂肪肝などのいくつかの障害が見いだされることがわかっています。これらは、いずれも重症化することで肝臓がんへと派生する疾患であり、その原因の特定・対策の開発が望まれます。 株式会社ユーグレナではこの度、独自の解析手法『サルファーインデックス解析』によって、宇宙飛行がマウスの肝臓に悪影響を与える一因を特定いたしました! サルファーインデックス解析は、筑波大学の大津巌生 准教授によって開発された解析手法です。 生体内の酸化還元反応の中核を担う硫黄化合物を網羅的に解析することで、生体内が酸化的なのか還元的なのか、それらは何によって引き起こされているのかなどを明らかにすることができます。 (サルファーインデックスの紹介ページ: https://tech.euglab.jp/sulfur/ ) 当社では、大津先生と特別共同研究を進め、JAXAから譲り受けた宇宙飛行を行ったマウスの肝臓をサルファーインデックス解析によって調べました。 研究の概略図 結果として、宇宙で飼育したマウスは、人工重力のあるなしに関わらず肝臓にある還元的な硫黄化合物が減少していることがわかりました。 これらの硫黄化合物は体内で抗酸化物質として働くため、宇宙での生活によって酸化ストレスを受けた結果、そのストレスを打ち消すために消費された可能性が考えられます。 宇宙飛行によって、減少した抗酸化物質 また、宇宙飛行を行ったマウスの肝臓での遺伝子発現を確認したところ、酸化ストレスや硫黄化合物代謝に関する遺伝子が多く発現していることが確認されました。 これも、強い酸化ストレスを受け、それにより減少した硫黄化合物を補うために起きたことだと解釈できます。 これらの結果は、当社研究開発部と筑波大学との共著によって、英国の科学学術誌Scientific Reports誌に掲載されました。 (掲載論文リンク : https://www.nature.com/articles/s41598-021-01129-1) 本研究成果は、宇宙での活動が活発化する近未来に向けて、人類が宇宙で健康的に活動するための重要な手掛かりとなることが期待されます。 具体的には、以下のような研究発展を見せる可能性が考えられます。 本研究によって、生体内の抗酸化物質が、宇宙で発生する酸化ストレスを緩和しうることが示唆されました。 このことは、宇宙での健康維持に硫黄系抗酸化物質の摂取が有効である可能性をも示します。 特に重要なのが、本研究により宇宙飛行によってエルゴチオネインの量が地上での生活時の半分ほどまで減ってしまうことが明らかとなったことです。 (エルゴチオネインの紹介ページ: https://tech.euglab.jp/ergothioneine/ ) エルゴチオネインは哺乳類の体で合成することができず、一部のキノコなどから微量に摂取するしかない物質です。 通常の宇宙生活において、減少したエルゴチオネインを既存の宇宙食のみで摂取することは難しく、従って、新たな宇宙食の開発指針となることが期待されます。

  • アルコールとデータサイエンス ー日本酒におけるデータサイエンスの研究の紹介ー

    アルコールとデータサイエンス これまでの「アルコールとデータサイエンス」のシリーズで、 アルコール飲料とデータサイエンスの関係性機械学習の大まかな分類とそれぞれの特徴 については紹介させていただくことができたと思います。 では、最後にユーグレナ先端技術研究課で行われている日本酒などのアルコール飲料に対する研究について、ご紹介させていただきたいと思います。 サルファーインデックス 以前の記事で紹介させていただきましたが、ユーグレナが特許を取得している解析技術に「サルファーインデックス」と呼ばれるものがあります。 サルファーインデックス技術は、硫黄化合物に特異的な誘導体化試薬を用いたLC-MS/MSを実施することにより、一般的な手法では検出できない微量な硫黄化合物の高感度かつ網羅的な検出や、有機硫黄化合物、無機硫黄化合物、さらには酸化型、還元型を問わず約50種類の硫黄化合物を同時に分析することができる技術です。サルファーインデックス受託分析サービス https://tech.euglab.jp/projects/%e3%80%90%e7%a0%94%e7%a9%b6%e7%b4%b9%e4%bb%8b%e3%80%91%e3%82%b5%e3%83%ab%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9%e8%a7%a3%e6%9e%90/ これがこれまでのアルコール飲料の話とどのような関係にあるのか。サルファーインデックスは、生物内で行われる無数の参加還元反応で多く使われている硫黄化合物の量を測定するために開発されたものです。これを調べることによって、生物内でどのような酸化還元反応が行われているのかを理解することができます。 また、日本酒やワインなどのアルコール飲料は、酵母などの菌類が様々な物質を発酵させることによってアルコールを作り出すプロセスに基づいて作られます。つまり、日本酒やワインの味わいには、菌類の活動が深くかかわっているのです。 サルファーインデックスを用いたアルコール飲料の解析 ユーグレナ先端技術研究課では、このサルファーインデックス技術ををつかって、アルコール飲料を分析する研究を行ってきました。開発者である大津先生の研究によれば、ビールをサンプルにした研究において、異なるサンプルのグループ間で差が見られたとのことです。 この研究では、多次元尺度法と呼ばれる機械学習を使うことで結果を解釈しています。これは前の記事で紹介させていただいた教師なし機械学習の一種で、データの中にある関係性を見るときに有効です。 この研究結果を踏まえると、サルファーインデックスは様々な発酵食品に対して、その分類や味わいの判断のために有効であると考えられます。先端技術研究課では、サルファーインデックスのPoCとしてもう一つ、アルコール飲料である日本酒に関しても分析しました。その結果の一部が次のようになります。 日本酒での解析結果 左がサルファーインデックスを含むメタボロミクスデータを次元削減したもの、真ん中が日本酒で定量的な評価として使われていた日本酒度と酸度でプロットしたもの、右が日本酒の専門家の方々に官能評価をしていただき、その結果を2次元にマッピングしたものです。 それぞれの関係性がわかりやすいように、専門家の方に行っていただいた官能評価(右図)をk平均法で色付けし、左の2つのプロットでも同じ色付けを行った形になります。これを見ると真ん中の日本酒度と酸度のプロットより、左のメタボロームデータを次元削減した結果の方が同じ色のグループがきれいに分離しているように見えます。 ビールや日本酒のようなアルコール飲料は、その生成過程に菌の活動が深くかかわっています。そのような食品の相対的な関係性を理解したいときには、サルファーインデックスという硫黄化合物の網羅的な解析技術や機械学習の中の次元削減と呼ばれる手法が役に立ちます。今回の解析のように味わいの近いに日本酒などがわかることによって、今後の商品戦略や顧客分析に対しての有効な情報源になることが考えられます。 サルファーインデックス受託分析サービスのご紹介 これまでになかった新しいデータと、近年便利に活用することができるのようになったデータサイエンスの手法をもとに、新たな知見やインサイトを得ることは可能です。サルファーインデックスは、今後様々な食品の分析に活用されることが期待されます。サルファーインデックスのご活用に興味を持たれた方は、下のリンクからご参照ください。 https://www.euglena.jp/businessrd/rd/sulfurindex/ 受託までの流れ 以上で「アルコールとデータサイエンス」の全三回とさせていただきます。最後までご覧いただきありがとうございます。

  • アルコールとデータサイエンス – そもそも機械学習とは? –

    機械学習とは 前回の『アルコールとデータサイエンス - scikit-learn wine datasetの活用 -』では、アルコール飲料であるワインや日本酒とデータサイエンスのかかわりについて触れ、最後にはLightGBMを用いたワインに使われている品種に対する多クラス分類予測を紹介しました。 しかしながら、前回の記事だけでデータサイエンス、特に機械学習のイメージを掴もうとするのは難しかったと思います。そこで今回は、機械学習ってそもそも何なのか?という観点で説明させていただきたいと考えています。 では、 機械学習ってそもそも何なのか? 機械学習とは、次のように定義されることもあります。 機械学習とは、言語やゲームなどをはじめとした人間の様々な知的活動の中で、人間が自然と行っているパターン認識や経験則を導き出したりするような活動を、コンピュータを使って実現するための技術や理論、またはソフトウェアなどの総称である。IT用語辞典バイナリ 人間は感覚器を通して得られた刺激を、これまでの経験に基づいて、特定のパターンであるとして認識して、過去の経験と紐づけることができます。 例えば、生後間もない赤ん坊に初めて猫を見せてたとき、赤ん坊はそれを視覚から入ってくる新しいパターンであると理解しても、それが何であるか一般的に理解することはできません。その後徐々に年を重ねるにつれて、実物や写真などで猫を見る機会を経て、徐々に『このパターンは猫である』と認知するようになっていくのです。 コンピュータの進化が進むにつ入れて、人工知能というものが作られるのではないかという空想は、フィクションは長い間の中で扱われてきました。 しかしながら、それはフィクションの話であって人間が持つ高度な認知能力を、究極的には単純な回路の組み合わせであるコンピュータによって再現することは、長い間できないとされてきていました。 一方で、人間の知的営みの一つの側面であるパターン認識を、コンピュータで再現できないかと研究と工夫がなされた結果、限定的な問題に対して、そのようなことができる仕組みが作られてきました。これが機械学習であると言えます。 機械学習分野での古典的名著として知られているものの中に、『パターン認識と機械学習』と呼ばれる本があります。これは、機械学習が人間も行っているパターン認識に根差したものであることに基づいていると考えられます。 https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b294524.html つまり機械学習は、『ある一連の情報から特定のパターンを抽出する活動を、コンピュータによって可能にしたものである』といえます。 ではこのコンピュータによって可能になったパターン認識を、どのように活用するかについては。様々な種類、それぞれの目的があります。そこで今回は、機械学習を3つの種類に分類して、説明したいと思います。 機械学習の3つの分類 機械学習を分類するときに、次の3つの種類に分けることが可能です。 教師あり学習教師なし学習強化学習 順を追って説明させていただきます。 一つ目の教師あり学習と、二つ目の教師なし学習は、学習データの違いによって分類されます。 教師あり学習とは 教師あり学習概略図 教師あり学習とは、『ラベルや予測値などが与えられるデータや問題に対して、未知データに関する予測をおこなう』機械学習のことを指します。 例えば、同じ微細藻類の仲間であるクロレラとユーグレナのデータを、それぞれどちらがどちらであるかわかる形で予測分類モデルに学習のために渡したとします。 このとき、予測分類モデルは、それぞれのグループにおける特徴的なパターンを抽出して、どちらがなんであるかを判別できるかどうかを学習しようとします。そして、未知のデータ(学習に使ってない)ものに対して、適切に予測分類ができていることが、このモデルの性能を計るものになります。 前回のワインのデータセットに対する学習は、この教師あり学習にあたるものです。また、多変量解析で一般的な回帰分析も、教師あり学習の一種としてみなすこともできます。 教師なし学習とは 教師なし学習概略図 教師なし学習とは、『データ自体の持つ特徴的なパターンを、ラベルや予測値という観点に基づかず、そのまま人間が理解しやすいパターンに変換する』機械学習を指します。 教師なし学習は、教師あり学習に比べると少し抽象的に聞こえるかもしれません。例えば、クロレラとユーグレナのデータを、そのままモデルに入力して、そのモデルが持つアルゴリズムに基づきパターンを抽出しようとするものがあります。 教師あり学習をするためには、①データがそれなりの量が存在する②かつそれらに適切なラベルや予測値がついている、という2つの要素が必要になります。 一方で、世の中には必ずしもそういうデータだけがあるわけではありません。データ量が少ないものもあれば、ラベルを付けることに金銭的時間的コストがかかりすぎて目的に合致しないこともあります。 ですから、ラベルがない状況やデータ量が少ない状況などで、データにどのようなパターンや傾向があるかを見るために、教師なし学習が使われたりすることがあります。 強化学習とは 最後に説明するのが強化学習です。強化学習はこれまでの機械学習とは少し異なったものになります。 強化学習概略図 強化学習とは、『エージェントと呼ばれる存在が、その環境の中で受け取れる報酬を最大化しようとする中で、目的となる状態や解を実現させることを目的としている』機械学習を指します。 先述した2つのものとは異なり、ある環境での最適な振る舞いはどのようなものか、というパターンを学習するものになります。 例えば、仮想的なユーグレナの培養環境があったときに、その環境においてエージェントがユーグレナが増えたときに報酬が与えられるような環境でエージェントに学習をさせると、エージェントがこの環境における最適化を導き出してくれるということが、この強化学習の例になります。 これはもちろん仮想的なもので実際の培養に役立つとは限りません、実際の研究においてはもっと想定していない発見や手法によって研究は進歩していきます。ただ、あるパラメーターや組み合わせの最適化をしたいときには、こういった手法が役立つ可能性もあると考えられます。 最後に 以上が、機械学習についてのまとめになります。重要なことは 機械学習とは、データの中に存在するパターンの抽出、そして活用である。機械学習には様々なものがあり、目的やデータに合致したものを選択する必要がある。 以上で、機械学習の全体像になります。では次の回で、ユーグレナでおこなったアルコール飲料に対する機械学習の応用について説明させていただきたいと考えています。

  • wine image

    アルコールとデータサイエンス -scikit-learn wine datasetの活用-

    アルコールとデータサイエンス 皆さんは『データサイエンス』と聞いてどのようなことを思い浮かべるでしょうか? 近年の情報技術の向上によって得られた大量のデータと、高性能な計算機が開発されたことによる処理の能力によって、データの中から知見を引き出そうという流れが強まっています。その一連の営みのことを『データサイエンス』と呼びます。 今回から始まる、『アルコール×データサイエンス』のシリーズでは アルコール飲料とデータサイエンスの関係性機械学習の大まかな分類とそれぞれの特徴ユーグレナ先端技術研究課でのアルコール飲料におけるデータサイエンス研究の紹介 を三部作でお届けしたいと思います。今回は『アルコール飲料とデータサイエンス』についてお話しさせていただきます。 アルコール飲料とデータサイエンスにどのような関係があるのか?と疑問に思われる方も多いかもしれません。しかしながら、長い間人類を魅了しているアルコール飲料を、もっと美味しいものにしたい!という考えのもと、近年そのような研究開発の重要性が高まっているという背景があります。 例えば、かの有名な『獺祭』を作っている旭酒造は、酒造りにデータサイエンスを取り入れたことで、高い品質の再現性と大量生産を確立しました(現在非公開)。 https://toyokeizai.net/articles/-/41798 酒造りは、伝統的に杜氏という職人文化によって支えられてきました。獺祭では杜氏がいない体制で酒造りをしており、優秀な杜氏がやっていたことを集団でやろうとしています。その中で、様々な形で酒造りの中でデータによる管理を行っています。具体的に挙げると、洗米という米を水洗いする行程では、コメの重量、洗う時間、水温などをすべて数値で計測し、コメに鳩首される水分量を0.2%以下の精度で調整できるようにしています。その日の気温によって少しずつ状況は変わりますので、数値を記録しながらその日に最適な条件にできるようにしてます。ほかにも、発酵の期間中には、さまざまなデータ(アルコール度数、日本酒度、糖度など)を毎日計測し、それぞれをすべて手書きでグラフにしています。毎日、その日に記録したデータから発行の進み具合を分析して、次の日の温度管理などを判断しています。獺祭では年間に900本当いう非常に多い本数の仕込みを行っていますので、繰り返しやっている中で「理想的な数値」がわかってきました杜氏のいない「獺祭」、非常識経営の秘密 これもデータサイエンスであり、データを活用して物事の改善をした大変良い例であるといえます。 データサイエンスとアルコール飲料の取り組みはこれだけに限ったものではありません。データサイエンスのために使われるプログラミング言語でpythonというものがありますが、その中で公開されているライブラリにscikit-learnというものがあります。このライブラリを活用することによって、データサイエンスの一つの分野である機械学習を活用することができます。 アルコールとデータサイエンスの活用(サンプルコード) 本記事では、簡単にその中でテストデータセットとして公開されているwine datasetというものを使って、機械学習のさわりを見てみたいと思います。 Wine datasetはカルフォルニア大学アーバイン校によって公開されている、Machine Learning Repository で公開されているもので、scikit-learnを使うことによって簡単に活用することができます。 ではコードに入ります。まず最初にライブラリを読み込みます。ローカルの環境でやるといろいろ設定が必要ですが、colabではただ次のようなものを実行するだけで十分です。 import numpy as np import pandas as pd import seaborn as sns import matplotlib.pyplot as plt import sklearn 今回使ったpythonとそれぞれのライブラリバージョンは次のようになります。 !python --version > Python 3.7.11 print('numpy :', np.__version__) print('pandas :', pd.__version__) print('seaborn:', sns.__version__) print('sklearn:', sklearn.__version__) > numpy : 1.19.5 > pandas : 1.1.5 > seaborn: 0.11.1 > sklearn: 0.22.2 データの確認・可視化 データセットを読み込みます。そしてデータセットのそれぞれの列の状況を確認しましょう。 from sklearn.datasets import load_wine wine = load_wine() df_x = pd.DataFrame(data=wine.data, columns=wine.feature_names) df_x.info() > RangeIndex: 178 entries, 0 to 177 > Data columns (total 13 columns): > # Column Non-Null Count Dtype > --- ------ -------------- ----- > 0 alcohol 178 non-null float64 > 1 malic_acid 178 non-null float64 > 2 ash 178 non-null float64 > 3 alcalinity_of_ash 178 non-null float64 > 4 magnesium 178 non-null float64 > 5 total_phenols 178 non-null float64 > 6 flavanoids 178 non-null float64 > 7 nonflavanoid_phenols 178 non-null float64 > 8 proanthocyanins 178 non-null float64 > 9 color_intensity 178 non-null float64 > 10 hue 178 non-null float64 > 11 od280/od315_of_diluted_wines 178 non-null float64 > 12 proline 178 non-null float64 > dtypes: float64(13) > memory usage: 18.2 KB これでそれぞれの列の名前と数、データ型がわかります。また、nullがないことを確認することも重要です。もし欠損値があった場合には適切に処理する必要があります。これ以外にもこれらのコードを実行すると、データを見ることができます。headで最初の5つのレコードが表示され、describeで記述統計量が表示されます。こういう基本的な確認はデータのイメージをつかむために重要です。出力は、ここでは省略させていただきます。 df_x.head() df_x.describe() 次に各変数の相関を見てみましょう。もし仮に回帰分析をするときには、強い相関がある者同士を排除する必要があります。相関を見るためにはseabornのパッケージを使うと便利です。 plt.figure(figsize=[19,10]) sns.heatmap(df_x.corr(),annot=True) 色が明るいものと真っ黒いものは相関係数の絶対値が相対的に高いことを意味します。 ここで改めてWine datasetについて説明させていただくと、このデータセットは142種類のワインに対して物理的/化学的特徴を測定したもので、このワインたちは使われているブドウの品種で3種類に分類することができます。その3種類について、別々の色付けを各変数同士で散布図を書きます。すべての変数ですると多すぎてこのサイトに収まりきらないので、いくつか抽出したものを載せます。 data = pd.concat([df_x[['alcohol', 'malic_acid', 'flavanoids', 'proline']], df_y], axis=1) sns.pairplot(data=data, hue='class', palette='tab10') これを見ることによって、各変数だけでもグループ間に差異があることがわかったり、2つの変数を使うことによって、よりグループ間の傾向に差があることを確認することができることがわかります。 機械学習(決定木モデルの学習と評価) 基本的なデータの確認が済んだので、ここから機械学習を中でも決定木アルゴリズムを使った予測というものをしていきたいと思います。 決定木アルゴリズムとは何でしょうか?決定木アルゴリズムとは、多次元データをもとに目的変数を予測、分類るための木構造を持ったモデルのことを指します。 通常の回帰モデルと異なり、非線形な関係を抽出できる点において、ニューラルネットワークと同様に高い予測精度と汎化性能を持っていることが知られていますが、ニューラルネットワークよりも説明変数の取り扱いが柔軟にできます。またモデルの構築も用意です。 決定木モデルには、シンプルに一つの木構造をもつものもありますが、複数の違う木構造のモデルによってより高い予測精度と汎化性能を求めようとするものもあります。今回はその中でも大きなデータセットでも効率的に学習ができるLightGBMと呼ばれるライブラリを使って、決定木アルゴリズムでワインのデータを学習するコードを載せます。 import lightgbm as lgb print('lightgbm:', lgb.__version__) > lightgbm: 2.2.3 まずワインのデータセットを再読み込みして、LightGBM用に変換します。今後精度を検証するために、学習データとテストデータで分割します。テストデータに学習データと同じものが入っている場合、モデルの一般性(汎化性能)に問題が出てしまうので、検証のためにあらかじめ分けることが必要です。 from sklearn.preprocessing import StandardScaler from sklearn.model_selection import train_test_split #データの再読み込み X1=load_wine() df_1=pd.DataFrame(X1.data,columns=X1.feature_names) Y_1=X1.target #説明変数の正規化 sc_1=StandardScaler() sc_1.fit(df_1) X_1=pd.DataFrame(sc_1.fit_transform(df_1)) #学習データとテストデータの分割 X_train,X_test,y_train,y_test=train_test_split(X_1,Y_1,test_size=0.3,random_state=0) #LightBGM用のデータセットに変換 d_train=lgb.Dataset(X_train, label=y_train) これで、あとはモデルのインスタンスをつくり、パラメーターを設定してあげれば学習を始めることができます。パラメーターは、今回考えるタスクがどのようなものであるかによって適宜設定してあげる必要があります。今回は多クラス分類であるので、次のように設定しています。 #パラメーターの設定 params={} params['learning_rate']=0.03 params['boosting_type']='gbdt' #GradientBoostingDecisionTree params['objective']='multiclass' #Multi-class target feature params['metric']='multi_logloss' #metric for multi-class params['max_depth']=10 params['num_class']=3 #no.of unique values in the target class not inclusive of the end value これをもとに、次のコードで学習をすることができます。あらかじめ分けておいたテストデータで予測性能を評価します。 #学習 clf = lgb.train(params = params,train_set = d_train,num_boost_round = 100) #予測 y_pred = clf.predict(X_test) y_pred = [np.argmax(line) for line in y_pred] ただし、この予測スコアは3つのクラスの確率で表されていることから、それぞれのデータに対して最大の確率を示しているクラスを予測結果として扱うことが適切です。numpyのargmaxでそのような処理が書かれています。 多クラス分類の性能評価には混合行列に基づく評価を用います。それぞれの評価の意味はこちらでまとめられています。 #予測結果の評価 print('precision score:', precision_score(y_pred,y_test,average=None).mean()) print('accuracy score', accuracy_score(y_pred,y_test).mean()) > precision score: 0.9470588235294118 > accuracy score ; 0.9444444444444444 このように、テストデータでも高い予測精度をもつモデルの学習ができたことがわかります。 最後に 今回の記事では、アルコール飲料とデータサイエンスということで、wine datasetを用いたデータの可視化や購買決定木アルゴリズムの適応を紹介しました。 次回の記事では、機械学習ってどういうものがなのかという、全体像についてご紹介できればと考えています。最後までお付き合いいただきありがとうございました。 <参考> https://nitin9809.medium.com/lightgbm-binary-classification-multi-class-classification-regression-using-python-4f22032b36a2

  • 【素材紹介】エルゴチオネイン

    以前の記事で、体の酸化と抗酸化物質について取り上げましたが、抗酸化物質には様々なものがあるのをご存じですか? 今日はそんな抗酸化物質の一つ、エルゴチオネインについてご紹介します。 エルゴチオネインの構造式 エルゴチオネインは、希少アミノ酸誘導体に分類される天然成分です。 一部のキノコや麹菌、放線菌などの微生物によって作られ、人間は体内で合成することができないため、これらの食品を食べることでのみ体に取り込むことができます。 エルゴチオネインは、非常に強い抗酸化活性を示すことが知られています。人の体内に最も多い抗酸化物質であるグルタチオンと比較すると、最大で30倍ほども高い活性酸素種消去能を持つともいわれています。 このエルゴチオネインが、健康成分として近年にわかに注目を集めてきています。 実は、ヒトの細胞にエルゴチオネインを特異的に取り込む働きをするトランスポーターがあることが明らかになり、ヒト細胞が高濃度にエルゴチオネインを蓄積していることもわかったのです。 人が、元来ヒトの体で作ることができないエルゴチオネインをこれほど積極的に利用しているということは大きなおどろきをもって受け入れられ、その後研究が進み、さらに驚くべきことがいくつもわかりました。 エルゴチオネインは、過酸化脂質と呼ばれ悪性物質の発生原因となるヒドロキシラジカルを唯一直接消去することができます。 また、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン氏病)、うつ病、肌の老化、白内障など、全身の様々な疾患の抑制に効果があることもがわかっています。 このように体にとって非常に有益なエルゴチオネインですが、加齢に伴って細胞への蓄積量が低下することもわかっており、食べて摂取することで様々な加齢に伴う疾患を抑制することができます。 他の抗酸化物質とは異なる強力な活性をもつエルゴチオネインは、未来のエイジングケアの鍵となる素材かもしれません!

  • 【健康コラム】体の酸化と抗酸化活性

    皆さんは健康食品や化粧品などのヘルスケア商品を手に取るとき、『抗酸化活性』を気にして選んでいますか? 気にしているという方でも、実はその詳しい意味をご存じないという方は少なくないのではないかと思います。 今回は体の酸化と、それに抗う抗酸化活性について、簡単にご説明いたします。 言うまでもなく、我々生物は、呼吸をしなければ生きていけません。 しかし、そもそもなぜ呼吸をしなければ生きていけないのでしょうか? 『酸素を取り込むためでしょ』と考えられた方、大正解です。 ヒトの体は、無数の酸化還元反応の連鎖によってできています。食べ物を食べてエネルギーを取り出すことも、栄養を基に体を作ることも、いずれも酸化還元反応です。 酸化還元反応は、平たく言えば物質間での電子の受け渡しです。酸化還元反応によって物質間を行き来した電子の、最後に行きつく先こそが、呼吸によって取り込まれた酸素です。 このように、酸素は体内では「最終電子受容体」と呼ばれる役割を担います。 さて、酸素と電子が出会うと、最終的には水になるのですが、その過程で非常に活性が高い酸素種『活性酸素種』を生み出します。 この活性酸素種は、免疫機能の一部としても働くのですが、過剰に発生してしまった場合に体にとって有害で、例えば、老化の促進や細胞のガン化、肥満・糖尿病などの生活習慣病の誘発など、様々な悪影響を及ぼすことが知られています。 このように体内に体にとって有害な量の活性酸素種が存在している状態を、我々は"体が酸化している"と表現しているのです。 体内の活性酸素種量は、日々の生活と密接に関係しています。 例えば不規則な食事、体への過度な負荷、飲酒・喫煙、紫外線・放射線への暴露などは、体の活性酸素種量を増やすリスクがあると報告されています。 反対に、いったん増加してしまった活性酸素種を行動によって減らすこともできます。 『抗酸化活性』と呼ばれる効果を持つものがそれにあたり、食べ物などから体内に取り込むことで効果を発揮します。 代表的な抗酸化物質には、ビタミンE(トコフェロール)やポリフェノール、カルテノイドなどがあります。 体内で合成されるものだけでなく、これらが豊富に含まれる食事を意識的に執ることで、過剰に産生された活性酸素種を除去することもできるのです。 美容と健康に気を付け、いつまでも元気な日々を送るためには、体の酸化リスクを低く保つことが肝要です。 日常の食事からこれら抗酸化物質の摂取を意識することは難しいという方も、まずはサプリメント等から体の酸化度ケアを行ってみてはいかがでしょうか?

  • 【素材紹介】パラレジン

    最近、コンビニやスーパーなどでもらえるレジ袋が有料になりましたね。 これは、従来のプラスチック製ビニール袋が環境へ大きな負荷を与えていることを受けて、身の回りのプラスチックのあり方やライフスタイルを見直すために行われた変更だということです。 従来の石油由来のプラスチックは、作るのにも処分するのにも大量の二酸化炭素を排出します。 また、海洋プラスチック問題などに代表されるように、環境中に放出されたプラスチックはなかなか分解されにくく、時に海洋生物の命を奪ったりもしてしまいます。 今、身近なプラスチックの存在を、世界的に見直すときが来ているのです。 そんな中、注目を集めるのが ”バイオマスプラスチック” です。限りある石油ではなく、再生可能なバイオマス資源から作成したプラスチックのことです。 バイオマスの持つカーボンニュートラル(製造過程でCO2を吸収するので燃やしても空気中のCO2量が増えない)な性質をゆえに従来のプラスチックより環境への負荷が低く、次世代のプラスチックとして注目されています。 我々ユーグレナでも、ミドリムシ由来のバイオマスプラスチックを開発し、その事業化を目指しています。 その名も、『パラレジン』! (左上)ユーグレナの固有成分パラミロン(右上)パラミロン由来プラスチック『パラレジン』(左下)パラレジンから作ったお皿(右下)パラレジンから作ったスプーン・へら ユーグレナの固有成分パラミロンから作り出した樹脂であることから、パラミロンの『パラ』と英語で樹脂を意味する『レジン』を掛け合わせて名づけました。 また、接頭辞のpara-には、「異なる」「別の」などの意味もあり、従来の石油由来プラスチックとは似ているけれど異なる樹脂、という意味も込めています。 パラレジンは、製造の過程を変えることで硬さや柔軟性、熱耐性などの様々な物理的性質を変化させられる可能性があります。 つまり、ビニール袋のように柔らかいものからパソコンのように固いものまでさまざまなものになれるということです。 今世界にあふれる石油由来のプラスチックを、少しでも環境負荷の低いパラレジンで置き換えることを目指して、我々は、複数の企業・団体と共にコンソーシアムを設立しました。 ご興味がございましたら、併せて【事業紹介】パラレジンジャパンコンソーシアムで詳細をご確認下さい。

  • 【研究紹介】ユーグレナの品種改良

    皆さんは、”ゲノム編集”という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 近年、簡便なゲノム編集ツールCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)システムが2020年のノーベル化学賞を受賞したことを皮切りに、メディアなどでも取り上げられることが多くなりました。 読んで字のごとく、ゲノム、すなわち遺伝子を編集することを意味する言葉です。 生命の設計書たる遺伝子を編集などというと、なにやら人智を超えた所業のようにも思えてしまいますが、そんなに超自然なことをしているわけではありません。 そもそも生き物は、環境に対して最適な形へと進化できるよう、常に外部の遺伝子を取り込めるような仕組みを持っているのです。例えば、一度感染したウイルスへの抗体の獲得などがそれにあたります。 植物でも、古くから非常に近いことをしています。交配による品種改良です。我々が普段口にする野菜や果物などは、よりおいしく&より強く&より実を多くつけるように、野生品種から改良を重ねてきたものが市場に出回っています。 さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、今回はそんな品種改良についてご紹介です。 ユーグレナは屋外での培養が難しく、商業目的で大量培養されるようになったのはごく最近です。それゆえに、品種改良と呼べるものがほとんど行われておらず、特に味やにおいなどについては、野生近い状態のままなのです。 そこで私たちは、微細藻類ユーグレナを簡単に品種改良できる手法を開発いたしました。 原理は簡単に説明すると以下の図のようになります。 ユーグレナの品種改良 まず、培養したユーグレナに、重イオンビームという放射線の一種を当てます。 このような高エネルギー波を当てると、ユーグレナのゲノムのあちこちに、もとの遺伝子配列とは異なるランダムな変化が起こることがあります。 その後、変化したユーグレナを、セルソーターという機械で一つ一つより分けていきます。 より分けたユーグレナを育ててみると、形や性質などが野生種とは全く異なるユーグレナがいくつも取れてきます。これらのユーグレナから、これまでの個体よりも良い個体が得られれば、品種改良は成功です! 弊社では、内閣府の競争的獲得研究費によってこのユーグレナの品種改良のための装置の開発・導入を進めてきました。 今では我々は、様々な性質をもったユーグレナを作成・育種することができます。例えば、燃料を多く作るユーグレナ、野生種よりも成長が速いユーグレナ、泳がないユーグレナなどなど… 我々は今後も、ミドリムシが作るサステナブルな社会を目指して、より優れた性質をもつ”スーパーユーグレナ”の作成研究を行っていきます。

  • 次世代のサステナブルな食糧生産法の紹介【精密醗酵(せいみつはっこう)】

    昨今、”精密醗酵(precision fermentation)” と呼ばれる技術の研究が産業レベルまで成熟してきています。 この技術を活用すると、哺乳類に頼らずに微生物の力だけでお肉や牛乳などの食用タンパク質が作れるようになるのです。 世界の食料問題解決のカギとも言われるこの技術についてご紹介いたします。 醗酵のイメージ(MrdidgによるPixabayからの画像) 〇哺乳類由来肉が抱える環境負荷の問題 近年、牛肉や豚肉などの哺乳類由来のタンパク質が与える環境への影響が注目されています。 牛肉や豚肉は当然それぞれ牛や豚からとれるわけですが、これらを育てるためには非常に多くの資源を必要とします。 例えば牛肉は1kg生産するために、飼料として消費されるトウモロコシは11kgに上ると言われています。 知ってる?⽇本の⾷料事情〜⽇本の⾷料⾃給率・⾷料⾃給⼒と⾷料安全保障〜 p.4より(農林水産省) すなわち、牛肉は実際に食べられる量の10倍以上量の別の食べ物を消費しなければ作れないのです。 飼料用のトウモロコシを育てるためにも多量の水・栄養源が消費されていることを考えると、牛肉等の哺乳類由来のタンパク質は、資源消費量の多い高環境負荷な食品ということができます。 世界人口は増加の一途をたどっており、このままでは大規模な飢饉発生すると言われている中で、哺乳類性のタンパク質の生産は大きな負荷になっています。 World Population 1820 2019 – SciFi (sciencefiles.org) この問題の解決のために、哺乳類由来に代わる様々なタンパク質食料の提案がなされています。 例えば植物や培養細胞を使った代替肉や、より環境負荷の低い昆虫食などがこれにあたり、すでに様々な企業が商品化に着手しています。 〇精密醗酵の特徴と代替肉との違い 精密醗酵もこれらに並ぶ、哺乳類に頼らないタンパク質生産法の一つです。 精密醗酵では、カゼインやオボアルブミンなどといった哺乳類由来のタンパク質を、微生物によって作らせる方法です。 これまでの代替肉と違うのは、これらが哺乳類由来とは異なる種類のタンパク質をお肉のように似せているだけなのに対して、哺乳類由来と全く同じ種類のタンパク質を作れているという点です。 一口にタンパク質といってもアミノ酸配列によって機能も風味も異なるため、精密醗酵で作られたお肉には風味や栄養素の面でも、既存の哺乳類由来のお肉と全く同じものが作成されできることが期待されます。 精密醗酵は微生物の遺伝子組み換え技術が前提となっており、本来哺乳類で作られるたんぱく質の遺伝情報を微生物に導入することで、同じタンパク質を微生物に作らせています。 Arek SochaによるPixabayからの画像 実は、類似の技術自体は古くからあるものです。 特定のタンパク質を大腸菌等に作らせる(=リコンビナント発現)は微生物学分野では汎用的な技術です。 産業分野でも、動物から作ると効率の悪いインスリン(糖尿病患者に投与する医薬品)やレンネット(チーズの凝固に使われるプロテアーゼ)の生産に使われています。 代替肉分野で革新的なのは、牛乳やお肉などといった、大量かつ複雑なものも再現するほどの精度で生産が可能になったことです。 例えばイスラエルにあるスタートアップ企業のImagindairy社は、精密醗酵によって牛乳が持つ何十種類ものタンパク質を正確に再現することで、本物と見分けのつかない完全な牛乳を作ることを目指しています (Imagindairy ) 〇ユーグレナ社の取り組み 当社でも以前より様々な低環境負荷食材の開発に着手しており、精密醗酵についても研究を開始しています。 藻類には、光合成によって二酸化炭素からタンパク質を合成できるという特性があります。 この特性を活用すれば、将来的には二酸化炭素からお肉を合成する、なんてことも可能かもしれません。 食についても将来への不安の少ない持続的な未来を作るため、今後とも研究開発を進めていきます。

  • ユーグレナ味の牡蠣!? ~~~販売開始~~~

    冬になると食べたくなる、牡蠣。実は牡蠣はサステナブルな可能性に溢れた食品だと言うことはご存じでしょうか? 牡蠣殻の主成分は炭酸カルシウム (CaCO3) ですが、牡蠣は成長の過程で海水に溶け込んだCO2を間接的に取り込んで牡蠣殻を合成するため、炭素の固定に寄与することが期待されています。さらに牡蠣養殖は、投餌の必要がないため環境負荷が少ない点、異常発生したプランクトンを摂餌により除去して海洋環境における物質循環の調整役を担う点からも、牡蠣はサステナブルな食材として注目されており、WWFのレポートでも言及されています(https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210308resource01.pdf)。 冬になると食べたくなる「牡蠣」 一方、弊社が有する独自素材、微細藻類「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」もサステナビリティへの寄与が期待される食材です。59種類の豊富な栄養素を含み健康食品として利用されるだけでなく、成長時に光合成をしてCO2を吸収するため、人と地球の健康を同時に実現するポテンシャルを持つ素材として注目されています。微細藻類ユーグレナについての紹介記事は⇒こちら 微細藻類「ユーグレナ」 この度、株式会社ユーグレナとうみの株式会社は、これらのサステナブルな素材、ユーグレナと牡蠣を組み合わせて、「フレーバーオイスター ユーグレナ」を共同開発いたしました。 「フレーバーオイスター」はうみの株式会社らが特許出願しました独自技術により作られます。この技術は、飼育水中に懸濁した非水溶性の微粉末を投餌すると牡蠣類が餌と誤認して摂食してしまう点と、牡蠣を海水から水揚げしてしまうと腸管内容物は排出されず保持される、という2つの性質を利用したものであり、任意の素材を取り込ませ、風味づけを行うことができる優れた技術です。 ひと口目は通常の牡蠣、しかし噛み進めると給餌素材の味わいが口に広がっていき、複雑で奥ゆかしい豊かなおいしさが感じられます。 この技術を用いて共同開発しました「フレーバーオイスター ユーグレナ」。断面からは緑色のユーグレナが垣間見られます。ひと口目は通常の牡蠣ですが、二口目から徐々にユーグレナの風味が広がってきます。牡蠣がユーグレナを少し消化したおかげで、ユーグレナ粉末をそのままかけて食べるよりも、ユーグレナの特徴的な藻の香りが抑えられ食べやすくなったのは興味深い点です。ユーグレナのフレーバーが感じられる美味しい牡蠣であることもさながら、ユーグレナが持つ豊富な栄養素も含まれ、さらには海や地球のサステナビリティに貢献できる可能性を有する商品となりました。 「フレーバーオイスター ユーグレナ」の断面図 社内のメンバー(28名)ではありますが、「フレーバーオイスター ユーグレナ」試食会が行われました。その結果、通常の育て方をした基準の牡蠣に比べて、好意的な食味結果が得られました。個人の感想ではありますが、「クリーミー感があった」「身が厚くうま味があった」等の声が聞かれ、ユーグレナフレーバーの牡蠣で一定の評価をいただくことができました。 [参考] 社内メンバー (28名) での試食会のアンケート結果 比較対象 (通常の牡蠣) での各項目を3とした際の相対値 以上のような「フレーバーオイスター ユーグレナ」、この記事をお読みいただいてお味が気になる方はいらっしゃるのではないでしょうか?そんな方々は、⇒こちら をチェックです。「フレーバーオイスター ユーグレナ」をお求めの方は通販サイトからご購入いただけます。 牡蠣小屋うみの https://kakigoyaumino.com/ (内容) ・プレーン8個 ・フレーバーオイスター ユーグレナ8個 (価格) 5,500円(税、送料別) 食べて美味しく、人も地球も健康に。この機会にご賞味いただき、ぜひ食卓で味わいながらサステナビリティについて考えていただくきっかけになればと考えています。 弊社はこれまで、バイオマスの5F※の基本戦略に基づき、ユーグレナなどの微細藻類を活用して、食品や化粧品をはじめとするヘルスケア事業やバイオ燃料開発・製造などのエネルギー・環境事業に取り組んできました。今回開発した「フレーバーオイスター ユーグレナ」は、5Fの中ではFeed(飼料)利用に相当し、ユーグレナのさらなる活用を進めるものです。ユーグレナ社は今後も、ユーグレナなどの微細藻類を活用した事業を推進します。 ※ バイオマスには、重量単価が高い順にFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の5つの用途があり、重量単価の高いものから低いものに順次事業を展開していくことで、バイオマスの生産コスト低減とバイオマスの利用可能性の拡大を推進する、という事業戦略

  • 宇宙飛行がマウスの肝臓に与える影響の一因を特定しました!

    2021年9月、アメリカのスペースX社がついに民間宇宙飛行を達成しました。 驚くべきことに、今回の宇宙飛行を達成した宇宙船『クルードラゴン』は、わずか半年ほどの訓練を経ただけの民間人4名のみをクルーとし、3日間の宇宙飛行ののち地球に帰還しました。 クルードラゴンがISSにドッキングする様子(©NASA) もはや宇宙飛行は我々民間人にとっても夢物語ではなく、生きているうちに人類が宇宙に移住する未来も見えてきているのです。 一方で、そうはいってもまだまだ本格的な宇宙移住に向けて解決するべき課題も山済みです。 特にわかっていないのが宇宙空間が生物に与える影響です。 宇宙空間は、あらゆる意味で地球上とは異なる環境です。大気が違うのはもちろんのこと、無重力環境や高線量な宇宙放射線の照射、数百℃に及ぶ寒暖差など、生物にとって過酷な要素がいくつもあります。 これらによって、宇宙飛行を行った生物はしばしば原因不明な体調不良を訴えることが知られています。 もっともよく試験されるマウスでは、特に肝機能に肝臓の線維化や非アルコール性脂肪肝などのいくつかの障害が見いだされることがわかっています。これらは、いずれも重症化することで肝臓がんへと派生する疾患であり、その原因の特定・対策の開発が望まれます。 株式会社ユーグレナではこの度、独自の解析手法『サルファーインデックス解析』によって、宇宙飛行がマウスの肝臓に悪影響を与える一因を特定いたしました! サルファーインデックス解析は、筑波大学の大津巌生 准教授によって開発された解析手法です。 生体内の酸化還元反応の中核を担う硫黄化合物を網羅的に解析することで、生体内が酸化的なのか還元的なのか、それらは何によって引き起こされているのかなどを明らかにすることができます。 (サルファーインデックスの紹介ページ: https://tech.euglab.jp/sulfur/ ) 当社では、大津先生と特別共同研究を進め、JAXAから譲り受けた宇宙飛行を行ったマウスの肝臓をサルファーインデックス解析によって調べました。 研究の概略図 結果として、宇宙で飼育したマウスは、人工重力のあるなしに関わらず肝臓にある還元的な硫黄化合物が減少していることがわかりました。 これらの硫黄化合物は体内で抗酸化物質として働くため、宇宙での生活によって酸化ストレスを受けた結果、そのストレスを打ち消すために消費された可能性が考えられます。 宇宙飛行によって、減少した抗酸化物質 また、宇宙飛行を行ったマウスの肝臓での遺伝子発現を確認したところ、酸化ストレスや硫黄化合物代謝に関する遺伝子が多く発現していることが確認されました。 これも、強い酸化ストレスを受け、それにより減少した硫黄化合物を補うために起きたことだと解釈できます。 これらの結果は、当社研究開発部と筑波大学との共著によって、英国の科学学術誌Scientific Reports誌に掲載されました。 (掲載論文リンク : https://www.nature.com/articles/s41598-021-01129-1) 本研究成果は、宇宙での活動が活発化する近未来に向けて、人類が宇宙で健康的に活動するための重要な手掛かりとなることが期待されます。 具体的には、以下のような研究発展を見せる可能性が考えられます。 本研究によって、生体内の抗酸化物質が、宇宙で発生する酸化ストレスを緩和しうることが示唆されました。 このことは、宇宙での健康維持に硫黄系抗酸化物質の摂取が有効である可能性をも示します。 特に重要なのが、本研究により宇宙飛行によってエルゴチオネインの量が地上での生活時の半分ほどまで減ってしまうことが明らかとなったことです。 (エルゴチオネインの紹介ページ: https://tech.euglab.jp/ergothioneine/ ) エルゴチオネインは哺乳類の体で合成することができず、一部のキノコなどから微量に摂取するしかない物質です。 通常の宇宙生活において、減少したエルゴチオネインを既存の宇宙食のみで摂取することは難しく、従って、新たな宇宙食の開発指針となることが期待されます。

  • アルコールとデータサイエンス ー日本酒におけるデータサイエンスの研究の紹介ー

    アルコールとデータサイエンス これまでの「アルコールとデータサイエンス」のシリーズで、 アルコール飲料とデータサイエンスの関係性機械学習の大まかな分類とそれぞれの特徴 については紹介させていただくことができたと思います。 では、最後にユーグレナ先端技術研究課で行われている日本酒などのアルコール飲料に対する研究について、ご紹介させていただきたいと思います。 サルファーインデックス 以前の記事で紹介させていただきましたが、ユーグレナが特許を取得している解析技術に「サルファーインデックス」と呼ばれるものがあります。 サルファーインデックス技術は、硫黄化合物に特異的な誘導体化試薬を用いたLC-MS/MSを実施することにより、一般的な手法では検出できない微量な硫黄化合物の高感度かつ網羅的な検出や、有機硫黄化合物、無機硫黄化合物、さらには酸化型、還元型を問わず約50種類の硫黄化合物を同時に分析することができる技術です。サルファーインデックス受託分析サービス https://tech.euglab.jp/projects/%e3%80%90%e7%a0%94%e7%a9%b6%e7%b4%b9%e4%bb%8b%e3%80%91%e3%82%b5%e3%83%ab%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9%e8%a7%a3%e6%9e%90/ これがこれまでのアルコール飲料の話とどのような関係にあるのか。サルファーインデックスは、生物内で行われる無数の参加還元反応で多く使われている硫黄化合物の量を測定するために開発されたものです。これを調べることによって、生物内でどのような酸化還元反応が行われているのかを理解することができます。 また、日本酒やワインなどのアルコール飲料は、酵母などの菌類が様々な物質を発酵させることによってアルコールを作り出すプロセスに基づいて作られます。つまり、日本酒やワインの味わいには、菌類の活動が深くかかわっているのです。 サルファーインデックスを用いたアルコール飲料の解析 ユーグレナ先端技術研究課では、このサルファーインデックス技術ををつかって、アルコール飲料を分析する研究を行ってきました。開発者である大津先生の研究によれば、ビールをサンプルにした研究において、異なるサンプルのグループ間で差が見られたとのことです。 この研究では、多次元尺度法と呼ばれる機械学習を使うことで結果を解釈しています。これは前の記事で紹介させていただいた教師なし機械学習の一種で、データの中にある関係性を見るときに有効です。 この研究結果を踏まえると、サルファーインデックスは様々な発酵食品に対して、その分類や味わいの判断のために有効であると考えられます。先端技術研究課では、サルファーインデックスのPoCとしてもう一つ、アルコール飲料である日本酒に関しても分析しました。その結果の一部が次のようになります。 日本酒での解析結果 左がサルファーインデックスを含むメタボロミクスデータを次元削減したもの、真ん中が日本酒で定量的な評価として使われていた日本酒度と酸度でプロットしたもの、右が日本酒の専門家の方々に官能評価をしていただき、その結果を2次元にマッピングしたものです。 それぞれの関係性がわかりやすいように、専門家の方に行っていただいた官能評価(右図)をk平均法で色付けし、左の2つのプロットでも同じ色付けを行った形になります。これを見ると真ん中の日本酒度と酸度のプロットより、左のメタボロームデータを次元削減した結果の方が同じ色のグループがきれいに分離しているように見えます。 ビールや日本酒のようなアルコール飲料は、その生成過程に菌の活動が深くかかわっています。そのような食品の相対的な関係性を理解したいときには、サルファーインデックスという硫黄化合物の網羅的な解析技術や機械学習の中の次元削減と呼ばれる手法が役に立ちます。今回の解析のように味わいの近いに日本酒などがわかることによって、今後の商品戦略や顧客分析に対しての有効な情報源になることが考えられます。 サルファーインデックス受託分析サービスのご紹介 これまでになかった新しいデータと、近年便利に活用することができるのようになったデータサイエンスの手法をもとに、新たな知見やインサイトを得ることは可能です。サルファーインデックスは、今後様々な食品の分析に活用されることが期待されます。サルファーインデックスのご活用に興味を持たれた方は、下のリンクからご参照ください。 https://www.euglena.jp/businessrd/rd/sulfurindex/ 受託までの流れ 以上で「アルコールとデータサイエンス」の全三回とさせていただきます。最後までご覧いただきありがとうございます。

  • アルコールとデータサイエンス – そもそも機械学習とは? –

    機械学習とは 前回の『アルコールとデータサイエンス - scikit-learn wine datasetの活用 -』では、アルコール飲料であるワインや日本酒とデータサイエンスのかかわりについて触れ、最後にはLightGBMを用いたワインに使われている品種に対する多クラス分類予測を紹介しました。 しかしながら、前回の記事だけでデータサイエンス、特に機械学習のイメージを掴もうとするのは難しかったと思います。そこで今回は、機械学習ってそもそも何なのか?という観点で説明させていただきたいと考えています。 では、 機械学習ってそもそも何なのか? 機械学習とは、次のように定義されることもあります。 機械学習とは、言語やゲームなどをはじめとした人間の様々な知的活動の中で、人間が自然と行っているパターン認識や経験則を導き出したりするような活動を、コンピュータを使って実現するための技術や理論、またはソフトウェアなどの総称である。IT用語辞典バイナリ 人間は感覚器を通して得られた刺激を、これまでの経験に基づいて、特定のパターンであるとして認識して、過去の経験と紐づけることができます。 例えば、生後間もない赤ん坊に初めて猫を見せてたとき、赤ん坊はそれを視覚から入ってくる新しいパターンであると理解しても、それが何であるか一般的に理解することはできません。その後徐々に年を重ねるにつれて、実物や写真などで猫を見る機会を経て、徐々に『このパターンは猫である』と認知するようになっていくのです。 コンピュータの進化が進むにつ入れて、人工知能というものが作られるのではないかという空想は、フィクションは長い間の中で扱われてきました。 しかしながら、それはフィクションの話であって人間が持つ高度な認知能力を、究極的には単純な回路の組み合わせであるコンピュータによって再現することは、長い間できないとされてきていました。 一方で、人間の知的営みの一つの側面であるパターン認識を、コンピュータで再現できないかと研究と工夫がなされた結果、限定的な問題に対して、そのようなことができる仕組みが作られてきました。これが機械学習であると言えます。 機械学習分野での古典的名著として知られているものの中に、『パターン認識と機械学習』と呼ばれる本があります。これは、機械学習が人間も行っているパターン認識に根差したものであることに基づいていると考えられます。 https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b294524.html つまり機械学習は、『ある一連の情報から特定のパターンを抽出する活動を、コンピュータによって可能にしたものである』といえます。 ではこのコンピュータによって可能になったパターン認識を、どのように活用するかについては。様々な種類、それぞれの目的があります。そこで今回は、機械学習を3つの種類に分類して、説明したいと思います。 機械学習の3つの分類 機械学習を分類するときに、次の3つの種類に分けることが可能です。 教師あり学習教師なし学習強化学習 順を追って説明させていただきます。 一つ目の教師あり学習と、二つ目の教師なし学習は、学習データの違いによって分類されます。 教師あり学習とは 教師あり学習概略図 教師あり学習とは、『ラベルや予測値などが与えられるデータや問題に対して、未知データに関する予測をおこなう』機械学習のことを指します。 例えば、同じ微細藻類の仲間であるクロレラとユーグレナのデータを、それぞれどちらがどちらであるかわかる形で予測分類モデルに学習のために渡したとします。 このとき、予測分類モデルは、それぞれのグループにおける特徴的なパターンを抽出して、どちらがなんであるかを判別できるかどうかを学習しようとします。そして、未知のデータ(学習に使ってない)ものに対して、適切に予測分類ができていることが、このモデルの性能を計るものになります。 前回のワインのデータセットに対する学習は、この教師あり学習にあたるものです。また、多変量解析で一般的な回帰分析も、教師あり学習の一種としてみなすこともできます。 教師なし学習とは 教師なし学習概略図 教師なし学習とは、『データ自体の持つ特徴的なパターンを、ラベルや予測値という観点に基づかず、そのまま人間が理解しやすいパターンに変換する』機械学習を指します。 教師なし学習は、教師あり学習に比べると少し抽象的に聞こえるかもしれません。例えば、クロレラとユーグレナのデータを、そのままモデルに入力して、そのモデルが持つアルゴリズムに基づきパターンを抽出しようとするものがあります。 教師あり学習をするためには、①データがそれなりの量が存在する②かつそれらに適切なラベルや予測値がついている、という2つの要素が必要になります。 一方で、世の中には必ずしもそういうデータだけがあるわけではありません。データ量が少ないものもあれば、ラベルを付けることに金銭的時間的コストがかかりすぎて目的に合致しないこともあります。 ですから、ラベルがない状況やデータ量が少ない状況などで、データにどのようなパターンや傾向があるかを見るために、教師なし学習が使われたりすることがあります。 強化学習とは 最後に説明するのが強化学習です。強化学習はこれまでの機械学習とは少し異なったものになります。 強化学習概略図 強化学習とは、『エージェントと呼ばれる存在が、その環境の中で受け取れる報酬を最大化しようとする中で、目的となる状態や解を実現させることを目的としている』機械学習を指します。 先述した2つのものとは異なり、ある環境での最適な振る舞いはどのようなものか、というパターンを学習するものになります。 例えば、仮想的なユーグレナの培養環境があったときに、その環境においてエージェントがユーグレナが増えたときに報酬が与えられるような環境でエージェントに学習をさせると、エージェントがこの環境における最適化を導き出してくれるということが、この強化学習の例になります。 これはもちろん仮想的なもので実際の培養に役立つとは限りません、実際の研究においてはもっと想定していない発見や手法によって研究は進歩していきます。ただ、あるパラメーターや組み合わせの最適化をしたいときには、こういった手法が役立つ可能性もあると考えられます。 最後に 以上が、機械学習についてのまとめになります。重要なことは 機械学習とは、データの中に存在するパターンの抽出、そして活用である。機械学習には様々なものがあり、目的やデータに合致したものを選択する必要がある。 以上で、機械学習の全体像になります。では次の回で、ユーグレナでおこなったアルコール飲料に対する機械学習の応用について説明させていただきたいと考えています。

  • アルコールとデータサイエンス -scikit-learn wine datasetの活用-

    アルコールとデータサイエンス 皆さんは『データサイエンス』と聞いてどのようなことを思い浮かべるでしょうか? 近年の情報技術の向上によって得られた大量のデータと、高性能な計算機が開発されたことによる処理の能力によって、データの中から知見を引き出そうという流れが強まっています。その一連の営みのことを『データサイエンス』と呼びます。 今回から始まる、『アルコール×データサイエンス』のシリーズでは アルコール飲料とデータサイエンスの関係性機械学習の大まかな分類とそれぞれの特徴ユーグレナ先端技術研究課でのアルコール飲料におけるデータサイエンス研究の紹介 を三部作でお届けしたいと思います。今回は『アルコール飲料とデータサイエンス』についてお話しさせていただきます。 アルコール飲料とデータサイエンスにどのような関係があるのか?と疑問に思われる方も多いかもしれません。しかしながら、長い間人類を魅了しているアルコール飲料を、もっと美味しいものにしたい!という考えのもと、近年そのような研究開発の重要性が高まっているという背景があります。 例えば、かの有名な『獺祭』を作っている旭酒造は、酒造りにデータサイエンスを取り入れたことで、高い品質の再現性と大量生産を確立しました(現在非公開)。 https://toyokeizai.net/articles/-/41798 酒造りは、伝統的に杜氏という職人文化によって支えられてきました。獺祭では杜氏がいない体制で酒造りをしており、優秀な杜氏がやっていたことを集団でやろうとしています。その中で、様々な形で酒造りの中でデータによる管理を行っています。具体的に挙げると、洗米という米を水洗いする行程では、コメの重量、洗う時間、水温などをすべて数値で計測し、コメに鳩首される水分量を0.2%以下の精度で調整できるようにしています。その日の気温によって少しずつ状況は変わりますので、数値を記録しながらその日に最適な条件にできるようにしてます。ほかにも、発酵の期間中には、さまざまなデータ(アルコール度数、日本酒度、糖度など)を毎日計測し、それぞれをすべて手書きでグラフにしています。毎日、その日に記録したデータから発行の進み具合を分析して、次の日の温度管理などを判断しています。獺祭では年間に900本当いう非常に多い本数の仕込みを行っていますので、繰り返しやっている中で「理想的な数値」がわかってきました杜氏のいない「獺祭」、非常識経営の秘密 これもデータサイエンスであり、データを活用して物事の改善をした大変良い例であるといえます。 データサイエンスとアルコール飲料の取り組みはこれだけに限ったものではありません。データサイエンスのために使われるプログラミング言語でpythonというものがありますが、その中で公開されているライブラリにscikit-learnというものがあります。このライブラリを活用することによって、データサイエンスの一つの分野である機械学習を活用することができます。 アルコールとデータサイエンスの活用(サンプルコード) 本記事では、簡単にその中でテストデータセットとして公開されているwine datasetというものを使って、機械学習のさわりを見てみたいと思います。 Wine datasetはカルフォルニア大学アーバイン校によって公開されている、Machine Learning Repository で公開されているもので、scikit-learnを使うことによって簡単に活用することができます。 ではコードに入ります。まず最初にライブラリを読み込みます。ローカルの環境でやるといろいろ設定が必要ですが、colabではただ次のようなものを実行するだけで十分です。 import numpy as np import pandas as pd import seaborn as sns import matplotlib.pyplot as plt import sklearn 今回使ったpythonとそれぞれのライブラリバージョンは次のようになります。 !python --version > Python 3.7.11 print('numpy :', np.__version__) print('pandas :', pd.__version__) print('seaborn:', sns.__version__) print('sklearn:', sklearn.__version__) > numpy : 1.19.5 > pandas : 1.1.5 > seaborn: 0.11.1 > sklearn: 0.22.2 データの確認・可視化 データセットを読み込みます。そしてデータセットのそれぞれの列の状況を確認しましょう。 from sklearn.datasets import load_wine wine = load_wine() df_x = pd.DataFrame(data=wine.data, columns=wine.feature_names) df_x.info() > RangeIndex: 178 entries, 0 to 177 > Data columns (total 13 columns): > # Column Non-Null Count Dtype > --- ------ -------------- ----- > 0 alcohol 178 non-null float64 > 1 malic_acid 178 non-null float64 > 2 ash 178 non-null float64 > 3 alcalinity_of_ash 178 non-null float64 > 4 magnesium 178 non-null float64 > 5 total_phenols 178 non-null float64 > 6 flavanoids 178 non-null float64 > 7 nonflavanoid_phenols 178 non-null float64 > 8 proanthocyanins 178 non-null float64 > 9 color_intensity 178 non-null float64 > 10 hue 178 non-null float64 > 11 od280/od315_of_diluted_wines 178 non-null float64 > 12 proline 178 non-null float64 > dtypes: float64(13) > memory usage: 18.2 KB これでそれぞれの列の名前と数、データ型がわかります。また、nullがないことを確認することも重要です。もし欠損値があった場合には適切に処理する必要があります。これ以外にもこれらのコードを実行すると、データを見ることができます。headで最初の5つのレコードが表示され、describeで記述統計量が表示されます。こういう基本的な確認はデータのイメージをつかむために重要です。出力は、ここでは省略させていただきます。 df_x.head() df_x.describe() 次に各変数の相関を見てみましょう。もし仮に回帰分析をするときには、強い相関がある者同士を排除する必要があります。相関を見るためにはseabornのパッケージを使うと便利です。 plt.figure(figsize=[19,10]) sns.heatmap(df_x.corr(),annot=True) 色が明るいものと真っ黒いものは相関係数の絶対値が相対的に高いことを意味します。 ここで改めてWine datasetについて説明させていただくと、このデータセットは142種類のワインに対して物理的/化学的特徴を測定したもので、このワインたちは使われているブドウの品種で3種類に分類することができます。その3種類について、別々の色付けを各変数同士で散布図を書きます。すべての変数ですると多すぎてこのサイトに収まりきらないので、いくつか抽出したものを載せます。 data = pd.concat([df_x[['alcohol', 'malic_acid', 'flavanoids', 'proline']], df_y], axis=1) sns.pairplot(data=data, hue='class', palette='tab10') これを見ることによって、各変数だけでもグループ間に差異があることがわかったり、2つの変数を使うことによって、よりグループ間の傾向に差があることを確認することができることがわかります。 機械学習(決定木モデルの学習と評価) 基本的なデータの確認が済んだので、ここから機械学習を中でも決定木アルゴリズムを使った予測というものをしていきたいと思います。 決定木アルゴリズムとは何でしょうか?決定木アルゴリズムとは、多次元データをもとに目的変数を予測、分類るための木構造を持ったモデルのことを指します。 通常の回帰モデルと異なり、非線形な関係を抽出できる点において、ニューラルネットワークと同様に高い予測精度と汎化性能を持っていることが知られていますが、ニューラルネットワークよりも説明変数の取り扱いが柔軟にできます。またモデルの構築も用意です。 決定木モデルには、シンプルに一つの木構造をもつものもありますが、複数の違う木構造のモデルによってより高い予測精度と汎化性能を求めようとするものもあります。今回はその中でも大きなデータセットでも効率的に学習ができるLightGBMと呼ばれるライブラリを使って、決定木アルゴリズムでワインのデータを学習するコードを載せます。 import lightgbm as lgb print('lightgbm:', lgb.__version__) > lightgbm: 2.2.3 まずワインのデータセットを再読み込みして、LightGBM用に変換します。今後精度を検証するために、学習データとテストデータで分割します。テストデータに学習データと同じものが入っている場合、モデルの一般性(汎化性能)に問題が出てしまうので、検証のためにあらかじめ分けることが必要です。 from sklearn.preprocessing import StandardScaler from sklearn.model_selection import train_test_split #データの再読み込み X1=load_wine() df_1=pd.DataFrame(X1.data,columns=X1.feature_names) Y_1=X1.target #説明変数の正規化 sc_1=StandardScaler() sc_1.fit(df_1) X_1=pd.DataFrame(sc_1.fit_transform(df_1)) #学習データとテストデータの分割 X_train,X_test,y_train,y_test=train_test_split(X_1,Y_1,test_size=0.3,random_state=0) #LightBGM用のデータセットに変換 d_train=lgb.Dataset(X_train, label=y_train) これで、あとはモデルのインスタンスをつくり、パラメーターを設定してあげれば学習を始めることができます。パラメーターは、今回考えるタスクがどのようなものであるかによって適宜設定してあげる必要があります。今回は多クラス分類であるので、次のように設定しています。 #パラメーターの設定 params={} params['learning_rate']=0.03 params['boosting_type']='gbdt' #GradientBoostingDecisionTree params['objective']='multiclass' #Multi-class target feature params['metric']='multi_logloss' #metric for multi-class params['max_depth']=10 params['num_class']=3 #no.of unique values in the target class not inclusive of the end value これをもとに、次のコードで学習をすることができます。あらかじめ分けておいたテストデータで予測性能を評価します。 #学習 clf = lgb.train(params = params,train_set = d_train,num_boost_round = 100) #予測 y_pred = clf.predict(X_test) y_pred = [np.argmax(line) for line in y_pred] ただし、この予測スコアは3つのクラスの確率で表されていることから、それぞれのデータに対して最大の確率を示しているクラスを予測結果として扱うことが適切です。numpyのargmaxでそのような処理が書かれています。 多クラス分類の性能評価には混合行列に基づく評価を用います。それぞれの評価の意味はこちらでまとめられています。 #予測結果の評価 print('precision score:', precision_score(y_pred,y_test,average=None).mean()) print('accuracy score', accuracy_score(y_pred,y_test).mean()) > precision score: 0.9470588235294118 > accuracy score ; 0.9444444444444444 このように、テストデータでも高い予測精度をもつモデルの学習ができたことがわかります。 最後に 今回の記事では、アルコール飲料とデータサイエンスということで、wine datasetを用いたデータの可視化や購買決定木アルゴリズムの適応を紹介しました。 次回の記事では、機械学習ってどういうものがなのかという、全体像についてご紹介できればと考えています。最後までお付き合いいただきありがとうございました。 <参考> https://nitin9809.medium.com/lightgbm-binary-classification-multi-class-classification-regression-using-python-4f22032b36a2

  • 【素材紹介】エルゴチオネイン

    以前の記事で、体の酸化と抗酸化物質について取り上げましたが、抗酸化物質には様々なものがあるのをご存じですか? 今日はそんな抗酸化物質の一つ、エルゴチオネインについてご紹介します。 エルゴチオネインの構造式 エルゴチオネインは、希少アミノ酸誘導体に分類される天然成分です。 一部のキノコや麹菌、放線菌などの微生物によって作られ、人間は体内で合成することができないため、これらの食品を食べることでのみ体に取り込むことができます。 エルゴチオネインは、非常に強い抗酸化活性を示すことが知られています。人の体内に最も多い抗酸化物質であるグルタチオンと比較すると、最大で30倍ほども高い活性酸素種消去能を持つともいわれています。 このエルゴチオネインが、健康成分として近年にわかに注目を集めてきています。 実は、ヒトの細胞にエルゴチオネインを特異的に取り込む働きをするトランスポーターがあることが明らかになり、ヒト細胞が高濃度にエルゴチオネインを蓄積していることもわかったのです。 人が、元来ヒトの体で作ることができないエルゴチオネインをこれほど積極的に利用しているということは大きなおどろきをもって受け入れられ、その後研究が進み、さらに驚くべきことがいくつもわかりました。 エルゴチオネインは、過酸化脂質と呼ばれ悪性物質の発生原因となるヒドロキシラジカルを唯一直接消去することができます。 また、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン氏病)、うつ病、肌の老化、白内障など、全身の様々な疾患の抑制に効果があることもがわかっています。 このように体にとって非常に有益なエルゴチオネインですが、加齢に伴って細胞への蓄積量が低下することもわかっており、食べて摂取することで様々な加齢に伴う疾患を抑制することができます。 他の抗酸化物質とは異なる強力な活性をもつエルゴチオネインは、未来のエイジングケアの鍵となる素材かもしれません!

  • 【健康コラム】体の酸化と抗酸化活性

    皆さんは健康食品や化粧品などのヘルスケア商品を手に取るとき、『抗酸化活性』を気にして選んでいますか? 気にしているという方でも、実はその詳しい意味をご存じないという方は少なくないのではないかと思います。 今回は体の酸化と、それに抗う抗酸化活性について、簡単にご説明いたします。 言うまでもなく、我々生物は、呼吸をしなければ生きていけません。 しかし、そもそもなぜ呼吸をしなければ生きていけないのでしょうか? 『酸素を取り込むためでしょ』と考えられた方、大正解です。 ヒトの体は、無数の酸化還元反応の連鎖によってできています。食べ物を食べてエネルギーを取り出すことも、栄養を基に体を作ることも、いずれも酸化還元反応です。 酸化還元反応は、平たく言えば物質間での電子の受け渡しです。酸化還元反応によって物質間を行き来した電子の、最後に行きつく先こそが、呼吸によって取り込まれた酸素です。 このように、酸素は体内では「最終電子受容体」と呼ばれる役割を担います。 さて、酸素と電子が出会うと、最終的には水になるのですが、その過程で非常に活性が高い酸素種『活性酸素種』を生み出します。 この活性酸素種は、免疫機能の一部としても働くのですが、過剰に発生してしまった場合に体にとって有害で、例えば、老化の促進や細胞のガン化、肥満・糖尿病などの生活習慣病の誘発など、様々な悪影響を及ぼすことが知られています。 このように体内に体にとって有害な量の活性酸素種が存在している状態を、我々は"体が酸化している"と表現しているのです。 体内の活性酸素種量は、日々の生活と密接に関係しています。 例えば不規則な食事、体への過度な負荷、飲酒・喫煙、紫外線・放射線への暴露などは、体の活性酸素種量を増やすリスクがあると報告されています。 反対に、いったん増加してしまった活性酸素種を行動によって減らすこともできます。 『抗酸化活性』と呼ばれる効果を持つものがそれにあたり、食べ物などから体内に取り込むことで効果を発揮します。 代表的な抗酸化物質には、ビタミンE(トコフェロール)やポリフェノール、カルテノイドなどがあります。 体内で合成されるものだけでなく、これらが豊富に含まれる食事を意識的に執ることで、過剰に産生された活性酸素種を除去することもできるのです。 美容と健康に気を付け、いつまでも元気な日々を送るためには、体の酸化リスクを低く保つことが肝要です。 日常の食事からこれら抗酸化物質の摂取を意識することは難しいという方も、まずはサプリメント等から体の酸化度ケアを行ってみてはいかがでしょうか?

  • 【素材紹介】パラレジン

    最近、コンビニやスーパーなどでもらえるレジ袋が有料になりましたね。 これは、従来のプラスチック製ビニール袋が環境へ大きな負荷を与えていることを受けて、身の回りのプラスチックのあり方やライフスタイルを見直すために行われた変更だということです。 従来の石油由来のプラスチックは、作るのにも処分するのにも大量の二酸化炭素を排出します。 また、海洋プラスチック問題などに代表されるように、環境中に放出されたプラスチックはなかなか分解されにくく、時に海洋生物の命を奪ったりもしてしまいます。 今、身近なプラスチックの存在を、世界的に見直すときが来ているのです。 そんな中、注目を集めるのが ”バイオマスプラスチック” です。限りある石油ではなく、再生可能なバイオマス資源から作成したプラスチックのことです。 バイオマスの持つカーボンニュートラル(製造過程でCO2を吸収するので燃やしても空気中のCO2量が増えない)な性質をゆえに従来のプラスチックより環境への負荷が低く、次世代のプラスチックとして注目されています。 我々ユーグレナでも、ミドリムシ由来のバイオマスプラスチックを開発し、その事業化を目指しています。 その名も、『パラレジン』! (左上)ユーグレナの固有成分パラミロン(右上)パラミロン由来プラスチック『パラレジン』(左下)パラレジンから作ったお皿(右下)パラレジンから作ったスプーン・へら ユーグレナの固有成分パラミロンから作り出した樹脂であることから、パラミロンの『パラ』と英語で樹脂を意味する『レジン』を掛け合わせて名づけました。 また、接頭辞のpara-には、「異なる」「別の」などの意味もあり、従来の石油由来プラスチックとは似ているけれど異なる樹脂、という意味も込めています。 パラレジンは、製造の過程を変えることで硬さや柔軟性、熱耐性などの様々な物理的性質を変化させられる可能性があります。 つまり、ビニール袋のように柔らかいものからパソコンのように固いものまでさまざまなものになれるということです。 今世界にあふれる石油由来のプラスチックを、少しでも環境負荷の低いパラレジンで置き換えることを目指して、我々は、複数の企業・団体と共にコンソーシアムを設立しました。 ご興味がございましたら、併せて【事業紹介】パラレジンジャパンコンソーシアムで詳細をご確認下さい。

  • 【研究紹介】ユーグレナの品種改良

    皆さんは、”ゲノム編集”という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 近年、簡便なゲノム編集ツールCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)システムが2020年のノーベル化学賞を受賞したことを皮切りに、メディアなどでも取り上げられることが多くなりました。 読んで字のごとく、ゲノム、すなわち遺伝子を編集することを意味する言葉です。 生命の設計書たる遺伝子を編集などというと、なにやら人智を超えた所業のようにも思えてしまいますが、そんなに超自然なことをしているわけではありません。 そもそも生き物は、環境に対して最適な形へと進化できるよう、常に外部の遺伝子を取り込めるような仕組みを持っているのです。例えば、一度感染したウイルスへの抗体の獲得などがそれにあたります。 植物でも、古くから非常に近いことをしています。交配による品種改良です。我々が普段口にする野菜や果物などは、よりおいしく&より強く&より実を多くつけるように、野生品種から改良を重ねてきたものが市場に出回っています。 さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、今回はそんな品種改良についてご紹介です。 ユーグレナは屋外での培養が難しく、商業目的で大量培養されるようになったのはごく最近です。それゆえに、品種改良と呼べるものがほとんど行われておらず、特に味やにおいなどについては、野生近い状態のままなのです。 そこで私たちは、微細藻類ユーグレナを簡単に品種改良できる手法を開発いたしました。 原理は簡単に説明すると以下の図のようになります。 ユーグレナの品種改良 まず、培養したユーグレナに、重イオンビームという放射線の一種を当てます。 このような高エネルギー波を当てると、ユーグレナのゲノムのあちこちに、もとの遺伝子配列とは異なるランダムな変化が起こることがあります。 その後、変化したユーグレナを、セルソーターという機械で一つ一つより分けていきます。 より分けたユーグレナを育ててみると、形や性質などが野生種とは全く異なるユーグレナがいくつも取れてきます。これらのユーグレナから、これまでの個体よりも良い個体が得られれば、品種改良は成功です! 弊社では、内閣府の競争的獲得研究費によってこのユーグレナの品種改良のための装置の開発・導入を進めてきました。 今では我々は、様々な性質をもったユーグレナを作成・育種することができます。例えば、燃料を多く作るユーグレナ、野生種よりも成長が速いユーグレナ、泳がないユーグレナなどなど… 我々は今後も、ミドリムシが作るサステナブルな社会を目指して、より優れた性質をもつ”スーパーユーグレナ”の作成研究を行っていきます。